組長の娘ーやっぱみんなちゃんとしたいねん

 この本は、著者のバッテン君が暴力団から足抜けした人達を追っていくうちに、なんだかやたらと人助けをしている人がいるすごい人に出会ってしまった・・・という話です。

 もうね、社会の底辺の底辺から世の中を見てみると、なんて不条理なことばかりか。そのど底辺でやることやって刑務所に行き、娑婆に帰った所で居場所がない、そしてまた犯罪を繰り返す。そんな人々を助け続けている、現代のマザーテレサといっても過言ではないと思いました。

 万引きを繰り返す人、せっかく釈放されたのに覚せい剤を止められない人、もうこいつは知らん、と見捨てられた人達を助けることは並大抵の事ではありません。せっかく助けても噛み付かれたりもします。それでもあきらめない。

 

組長の娘 中川茂代の人生:更生した女性が語る自身のライフヒストリー

組長の娘 中川茂代の人生:更生した女性が語る自身のライフヒストリー

 

 私もボランティアをしていて、同じような事で悩み、でも怖かったのと、なんでって怒りから手放したことがありました。だから、どうしてそんな人を許せるのか。。。その事が、彼女自身が人を裏切り、刑務所に行き、ゆるされた経験から、そうするのが自然であるとなったとすると、到底かなうものではないと思いました。

 この本の前半はそんな彼女のひとりごっつなんでやねん物語です。楽しく読んで泣いて笑いました。後半は筆者バッテン君による社会学を駆使した、なぜそうなるのか、どうしたらうまくいったかの分析です。

 それによると、「痛みが分かる」「真に犯罪から足を洗ったかが自身の経験則に照らして分かる」支援者の存在が重要だと言う事でした。

 今の日本で、一度犯罪をおかしたものは、社会復帰は普通の手段ではまず難しい。私自身も、その事が犯罪を助長していると理解しているとしても、いざ自分の近所に住んだり、自分の職場に就職するとなれば嫌だという感情が先に立ってしまいます。

 だからこそ、この本の方のように親身になれる支援者が必要で、そういう支援者も支援された経験があってこそだとすると、一般の人にはまず難しい。だけどこの循環を強くするための支援ならば、私にもできるかもしれません。