現代の社会病理ー統計データ好きにはたまらない逸品でした!

 土日は岩手大学で社会病理学会があり、かりだされてきました。そこで頂いたのが、この冊子「現代の社会病理」です。
 
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 いかつい名前ですが、きのうのコミュニティの本にくらべたらずっと読みやすいです(汗)この号では若者特集というこで若者の少年犯罪、自死、幸福感といったテーマを扱っています。
 もう徹底的に統計データを追いかけ、時には研究者自身が危険をかいくぐってインタビューを行い、刑務所や少年院に通い詰め、なぜ人は犯罪を起こすのか、なぜ人は自殺するのかを徹底調査しています。その舞台裏をいろいろお伺いしたのですがいやはや、こんなにドラマチックな業界があったんだと驚きです。
 
1章目は生活満足度と逸脱行動の研究です。逸脱行動はやっちゃいけない事をやっちゃう感じの事です。なぜいけない事をやっちまうかというと、「努力しても報われない」と考える若者が増加している事と関係があるらしいのです。一方で生活満足度は上昇傾向にある。これは従来の価値観では矛盾しているのですが、調査を進めていくと、未来に希望を抱けないので、現在は幸せであると合理化している、そうしたむなしい気持ちから、簡単に犯罪や自殺を選んでしまう・・・という事を統計データから読み解いています。
 
2章目はメンタルヘルスが悪いにも関わらず自死率の低い人達の研究です。その前段階として日本の自死の歴史について統計データを追って解説しています。そして女性は「打たれ弱いが、立ち直りもはやい」男性は「打たれ強いが,もろさも同居」する姿を明らかにしていきます。
 
3章目は若者の幸福感についての研究です。若者をとりまく環境が悪化しているにもかかわらず、幸福度はこの10年以上も上昇し続けている謎があります。まず日本の幸福の研究の歴史について振り返り、現在の若者が幸福だという統計データと、それに困惑する人々の紹介、そして幸福についてのアンケートを実施して分析した結果と続いています。それによるとバブル崩壊後じょじょに家族や友人関係が良好化していること、やっぱり社会経済の悪化に伴う下降圧力があること、2つのパラメーターを掛け合わせた結果、パラドックスが発生しているという事でした。
 
4章目はどんな若者が幸福で、どんな若者が不幸を感じているかという研究です。まず日本の幸福観について、比較としてアメリカの幸福観、ニートとひきこもりの実情を調査。日本では個人主義を実践するほど孤独になる傾向があること、アメリカではそんなことないこと、その違いから幸福の仕組みを読み解いていきます。
 
ここまで前半で、後半も韓国の大学生の意識調査、少年院,地域福祉ハンセン病、非行少年、ヤクザ、家族と盛りだくさんでした。正直、ここでだけ読んでいるのももったいないので、どこかで読書会ができたらなあと思います。